計算機がコンピュータになるまでのプロセス

 計算機がコンピュータになるまでのプロセスの一端を紹介したいと思います。以下の書籍の内容を参考にしております。

 

坂村健『痛快!コンピュータ学』(集英社文庫、2016年)

 

汎用性

 複雑な計算でも高速で行ってくれる機械が「電子計算機」です。そして計算専門でなく、色々な用途で使えるようになった「汎用性」のある機械がコンピュータです。

 

情報のコード化

 この「汎用性」はどのようにして生み出されたかというと「情報のコード化」にあります。例えば大学生という1人1人の人間の姿は、簡単に表現できない曖昧な情報です。しかし「名前」が付与されることによって、1人1人の区別がしやすくなりました。さらに「学生番号」が付与されることによって、「同姓同名」の学生を区別することも可能になっています。

 このように、名前や学生番号の付与のようなことを「情報のコード化」と言えるのではないでしょうか。学生番号というシンプルに管理されたコードのおかげで、学生たちは図書館の利用や課題の提出など、幅広い場面でスムーズに行動できるようになりまります。

 

物理学の盲点

 情報のコード化によって、電子計算機は計算以外の用途でも使えるといったことを提唱したのは、クロード・シャノン(1916-2001)でした。

 コンピュータを「計算マシン」を「汎用マシン」に生まれ変えさせるきっかけとなったこの情報理論は、実は物理学の盲点でもありました。

 19世紀から20世紀にかけては、世界を動かす原理を「物理とエネルギー」から解き明かそうとした時代でした。しかしシャノンが提唱したことこそが、「物理学だけでは解き明かせないものが情報である」といったことでした。

 なぜそんなことが言えるかというと、サルにペンを持たせて何かを書かせた「紙」も、人間が考えて文章を書いた「紙」も、物理学から見れば物質の構成も光の反射も同じだからです。でも実際僕たちから見ればそれそれの紙は「全く異なる情報」として受け取ることができるはずです。

 

情報の原子「ビット」

 この情報のコードを最小の単位で表したものが「ビット」です。これは「0」と「1」のことです。数字を表記するのに0~9という10種類を使い分けるよりも、たった2種類だけの方がシンプルということでしょう。

 

デジタルとアナログ

 ビットでコード化された情報の例を挙げましょう。音楽で言えば、生演奏やカセット・テープはアナログな情報です。しかし「CD」は、ビットの単位まで分解して記録されたデジタルな情報になります。17時10分05秒と表示される「デジタル時計」のように不連続的に区切られているデジタルな情報もコード化されたものであります。